設立趣意書

分子免疫学研究所は、1999年、東京大学名誉教授であられた故江川滉二先生が創設され、その後、社会情勢等の影響により存続が困難となり廃止されておりました。 この度、故江川滉二先生の尊大なご意志を引き継ぎ、分子免疫学の成果をがん免疫・遺伝子治療等に応用するための 研究・調査による普及促進を図ることを目的として設立いたしました。

現在のがん治療は、三大治療といわれる外科療法、化学療法、放射線療法を中心に大きく発展を遂げているものの、進行がんにおいては根治が難しく、また、治療の副作用を被ることにより、必ずしも患者の利益につながらない場合も多く、現状においては真に患者の利益となる新たな治療法の確立が求められています。

近年の分子免疫学の進歩は、腫瘍や病原微生物に対する生体の免疫応答機構を飛躍的に解明し、各種疾患に対する治療法の新しい発展に大いなる可能性をもたらしています。 またバイオテクノロジーの発展は、細胞医療という新しい視点に立った治療法を成立させています。

がん免疫治療および遺伝子治療においては、細胞医療の分野などでその有効性が報告され、厚生労働省の承認および法制化の下で先進医療あるいは再生医療等として普及し始めています。 今後も真に患者の利益となるがん治療の一つとして、さらに広く普及すべきであり、改良による大きな進歩の可能性をもった治療法でもあります。 また、従来の三大治療法などと積極的な併用も可能で、根治手術後の再発率を減少させる報告もされており、大いに研究が推進されるべきと考えています。

しかしながら、がん医療の現状は、分子免疫学を基盤とするがん免疫治療、遺伝子治療が標準治療のひとつとなるには程遠い状況であり、この要因には、医療界での理解不足、現状の医療システムでの社会的な制約などが起因していると思われます。 これらの点をふまえ、がん免疫治療、遺伝子治療の健全な普及発展を目指すべきであり、学術活動・情報発信、調査研究の促進、および医療行政に対する提言などを行っていくことが不可欠と考えます。

一般社団法人分子免疫学研究所は、東京大学名誉教授 故江川滉二先生のご意志を受け継ぎ、 生体防御分野における分子免疫学に関する研究調査を推進し、 学術研究の進展および国民の先端医療、予防医療に関する教養・知識の高揚、普及発展に貢献することを目的として設立するものであります。

一般社団法人 分子免疫学研究所
理事長 野口 活夫